今年の桜は

今週のお題「桜」


わたしの家の近くには、川に沿った桜並木がある。桜がうつくしいものだと気がついたのは中学生のころ、家族とご飯を食べた帰りに提灯に照らされたこの桜を見たときだ。とにかくうつくしかった。強いて言うなら千と千尋の神隠しのあの街に似ていてとても幻想的だ。それからは毎年のように春には桜を見に川沿いを歩いた。好きな人と行動をともにするようになってからは立ち止まったり出店で買った温かいものを食べながら桜を眺めた。やはりその時の桜は一層うつくしかったように思える。去年は「震災の影響」で提灯のライトアップはなかったが、それでも満開の桜はうつくしかった。
今年はというと、桜を見ても何も感ずるところがない。満開に咲いた桜を見ても鳥肌が立たない、心が揺さぶられない。何というべきか、うつくしいものをみて何も感じないということそれ自体がたいへん恐ろしい事のように思える。感覚はすっかり鈍ってしまったようだ。今年はあの桜を見に行くのが怖い。
いつでも胸を高鳴らせ小さなことでも涙したくさんのものをいつくしむ心。